2020/10/27 16:46

「偏愛」

彼に初めて会ったのは八年前。それは使い古された言葉だが体中に電気が走るような衝撃的な出会いだった。

彼によって私の概念は覆された。

でもそのころの私にはまだ彼のポテンシャルを活かしきれるほどの能力はなかったし、その潜在能力に気づいてやれることもできなかった。

それでも彼は私の中で特別な存在となり、私の歩むべき道に少しずつではあるが導き苦楽をともにしてきた。

私も少しずつではあるが、彼の魅力を知り、どう引き出せば一番輝くことができるのかがわかってきたように思う。

どんなときでも彼は私の隣にいて、私とはどういう人間なのかを表現するべく輝いてくれた。

そんな彼に私は最大限の敬意と愛情を以て、今日もコーヒーを淹れている。

今日のコーヒーは、カリイ・ケニア。

久しぶりのキリニャガ地区のケニアで、産地の特性であるスパイスのニュアンスを心地よく感じさせながら、マスカットやグレープフルーツのフレーバーとミルクチョコレートの甘い余韻を楽しめる。

産地や生産者によって様々なキャラクターを見せてくれるケニアのコーヒー。

減産や化学物質による汚染報道など、暗い話題も散見される昨今。

私にできるのは彼が持つ唯一無二ともいえる明るく、複雑な味わいの魅力を一人でも多くの人に届けることしかない。